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京都大学法科大学院(法学研究科 法曹養成専攻)

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法科大学院について
平成28年度入学式式辞

                             法科大学院長  山本 敬三

 新入生の皆さん、京都大学法科大学院へのご入学、おめでとうございます。
本年は、本法科大学院の13期生として、未修者28名、既修者127名の総計155名の新入生を迎えることができました。皆さんが京都大学法科大学院を研鑽の場として選ばれたことを心よりうれしく思います。
 皆さんにとって、法科大学院はすでにあるものであって、なぜあるかということは、あまり考えたことはないかもしれません。日本に法科大学院ができたのは、2004年です。これは、当時の司法制度改革の柱の1つとして導入されました。
 その背景には、バブル経済の崩壊後、金融システムが危機的状況に陥り、政府が巨額の財政支出を繰り返したにもかかわらず、経済活動が停滞したことがあります。これにより、日本の社会・経済には構造的な欠陥があり、その改革が避けられないと考えられるようになりました。そこで、市場原理を重視し、民営化と規制緩和を推進することが目指され、それまでの行政機関による公式・非公式の事前規制を撤廃し、明確で公正なルールによる事後規制へと転換することが図られました。
  こうした改革が目指すのは、自由で公正な社会であり、「法の支配」が妥当する社会です。そのような社会を実現するためには、司法制度の利用が容易でなければなりません。ところが、それまで、日本では、法曹人口の数が非常に限られ、司法へのアクセスが阻害されていました。そこで、そうした司法の担い手として法曹の数をふやすことが求められました。しかし、従来の司法試験をそのまま維持し、合格者の数をふやすだけでは、質を確保することができません。そこで、「法の支配」を実現する担い手として、質の高い優れた法曹を数多く養成するために、新たな教育機関として法科大学院が導入されたわけです。
  京都大学法科大学院は、開設以来、このような法科大学院の理念を実現することを目的としてきました。質の高い優れた法曹、しかも社会の幅広い分野において指導的な役割を果たす法曹を養成することが、われわれの目指すところです。
  では、どうすればそのような法曹を養成することができるでしょうか。
  多くの法科大学院では、実際の裁判例や具体的なケースを素材として、実践的な法的思考をトレーニングするという手法が採用されています。教科書的な知識がいくらあっても、具体的なケースに即して法的な判断を適切に行うことはできません。法科大学院では、そうした法的知識を具体的なケースに即して展開する能力を、教員と学生との双方向のやり取りを通じて身につけてもらうことが教育の中心を占めています。本法科大学院でも、その点は同様です。というよりも、そうした教育がどこよりも徹底して行われているといってよいでしょう。
  しかし、京都大学法科大学院の特徴は、そこに尽きません。そうした法的知識の背後にある理由を問うという姿勢が徹底されているところに特徴があります。
  実務はこうなっている。通説はこう言っている。それでは、すまされません。一般には、こういう理由があげられている。しかし、なぜそれが理由になるかというと、実はこう考えられているからではないか。それは本当か。そのように、目の前にある事柄の前提を明るみに出し、それがけっして自明のものではないことを明らかにする。これは、まさしく理論の役割であり、学問の世界に属する事柄です。そのようにして物事を見きわめようとする姿勢を養う場が大学であり、そこにこそ京都大学の京都大学たるゆえんがある。そして、そのようにして身につけた考える力が、これまで当然と考えてきたことが崩れ、考えたこともないような未知の問題が次々とあらわれる社会において、指導的な役割を果たす法曹として活躍していくための基礎になる。
  これが、京都大学法科大学院の基本理念にほかなりません。この意味での理論教育の重要性は、研究者教員はもちろん、実務家教員にも深く共有されています。研究者教員による実務を視野に入れた理論教育と、実務家教員による理論を視野に入れた実務教育を通じて、本法科大学院は、理想的な教育を提供することができているとわれわれは自負しています。実際、本法科大学院でこのような教育を経て巣立っていった修了生たちは、司法研修所の教官や先輩の法曹の方々から、本当によくできる、さすがは京大生であると、高い評価を受けています。
 すでに皆さんは、履修指導や先日の入学祝賀懇親会などを通じて、教員や先輩たちからいろいろなアドバイスを耳にしておられると思います。私からは、そうしたアドバイスというよりも、皆さんへの希望をここで伝えておきたいと思います。
  第一に、皆さんには「学ぶ構え」を持ち続けてほしいと思います。 いきなりそういわれても、わからないかもしれません。「学ぶ構え」とは何か。それは、自分には欠けるところがあるという意識と、その欠けているところを克服していこうという意欲によって作り出されます。自分は十分にえらいのだから、そのえらい自分がわからない説明をするのは、説明の仕方が悪いからだ。そう思っているかぎり、他人から学ぶことはできません。逆に、自分には欠けるところがあると自覚している人は、わからないことがあれば、それは自分に問題があるからだと考え、それを克服しようと謙虚に学ぼうとします。それが、「学ぶ構え」にほかなりません。
  残念ながら、この20年あまりの間に、日本の教育界ではこの「学ぶ構え」が失われてきているように感じます。教育が、お客様に教育サービスを提供するものであるという理解が広まってきたためでしょう。しかし、どんなに優れた教育サービスを提供しても、「学ぶ構え」がなければ、伝わるものも伝わりません。逆に、「学ぶ構え」さえあれば、人はあらゆることから学んでいくことができます。教育を成り立たせるのは、この「学ぶ構え」です。
  皆さんに望むのは、自分の周りにいる人たちと比べてはいけないということです。周りと比べて、自分がよくできるように見えても、周りのレベルが低ければ、無意味です。皆さんが比べるべき相手は、本来あるべき京大生、さらにいえば、本来あるべき法曹です。自分は本来あるべき京大生、本来あるべき法曹と比べて欠けているところがあるのではないか。それをどうすれば克服していけるか。そのための手がかりが法科大学院での授業の中に散りばめられている。そう思って精進を続けてください。
  第二に、これから皆さんが法科大学院で受けられる教育は、たしかに非常にハードです。しかし、それは、皆さんが将来、法曹として生きていくための練習だということを理解してください。
  ここにおられる皆さんがなろうと考えておられる法曹の仕事は、皆さんがイメージできないぐらいハードなものです。弁護士にしても、裁判官にしても、検察官にしても、たくさんの案件が休みなく降りかかってきます。しかも、それぞれの案件は、それぞれの当事者の人生を左右しかねない事柄にかかわります。それを的確に、それも確実に決められた期日の中で仕上げていなければならない。そういう正確さとスピードの両方を要求される、実にしんどい仕事が待っているわけです。
  法科大学院の授業で課題を出されて、当日までにきちんと準備をする。試験までに必要な準備をして、かならず望ましい結果を出す。これらはすべて、将来のための練習にほかなりません。授業では、あてられて、準備ができていませんでした。わかりませんと頭を下げれば、許してもらえるかもしれません。試験で少々失敗しても、進級できたりします。しかし、実際の仕事になりますと、それでは背後に控えている当事者が不利益をこうむることになってしまいます。そうならないように、限られた時間の中で、かならず一定の結果を出すためには、何をどのように準備すればよいか。それを法科大学院でのハードな授業と厳しい試験を通じて学んでいただければと思います。
  第三に、法科大学院では、法律の勉強をするだけでなく、将来自分が進む道ついてじっくりと考えてください。本法科大学院では、皆さんが進路を考えるための貴重な機会を提供しています。
  シラバスをご覧いただいてもわかるとおり、数多くの、それも超一流の実務家教員がバラエティに富んだ授業を提供してくださっています。授業の内外でお話しをうかがうことを通じて、実務法曹の仕事や生き方に接し、将来の進路を考えるきっかけにしてください。
  また、最近では、法科大学院を経て、民間企業や官公庁に進む人たちの数が急速にふえてきています。本法科大学院では、就職支援室を設け、そうした民間企業や官公庁も含めた進路に関する情報を皆さんにお伝えする活動にも力を入れています。
  さらに、法曹の世界でも、国際化への対応が求められています。本法科大学院でも、外国人教員による英語の授業のほか、同志社大学法科大学院との支援・連携の一環として、ウィスコンシン大学が提供するプログラムや海外エクスターンシップといった国際化関連科目を用意しています。
  最後にもう1つ、「研究者」という進路もぜひ皆さんの選択肢に加えてください。京都大学は、これまで日本の法学研究を支える役割を果たしてきましたし、これからも果たさなければなりません。次世代の法学研究者を育成することは、実務法曹の養成に勝るとも劣らない重要なミッションです。そのため、本研究科では、法科大学院を修了した後に博士後期課程に進学して研究者の道に進む人たちのために、特別の教育カリキュラムや充実した経済的支援を提供しています。これまで、皆さんの先輩たちのなかから、すでに30名以上の方々が研究者の道に進まれ、われわれの同僚の准教授となっている方も8名にのぼっています。皆さんのなかからも、研究者をめざす人が何人も出てくることを願っています。
  私から皆さんへの希望は以上のとおりです。皆さんは、これからの司法を支える人材であり、日本社会において「法の支配」を浸透させる重要な役割を担っておられます。皆さんが、本法科大学院で、高い志をもって研鑽を積まれ、優れた法曹として活躍するための力を身につけられることを祈って、私の式辞とさせていただきます。  

 
 
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