過去の入試説明会等での講演内容からの抜粋です。身分・所属等は、とくに断りがない限り、当時のものです。


山田 尚史

やまだ ひさし

フェニックス法律事務所(大阪)

2006年入学/ 2008年修了
京都大学法学部 卒

ロースクール
で学ぶことの意義と弁護士の仕事の醍醐味

私は平成20年に京都大学の法科大学院を修了し、今、弁護士になって13年目です。
 初めに京都大学のロースクールで学ぶ意義について触れますと、まず一点目に、講義が非常にハイレベルだということを挙げることができます。ロースクールでは、多くの方にとって司法試験に合格することが一つの目標であり、その中でハイレベルな講義を受けられるかどうかということは、大変関心が高い事項だと思います。私の印象では、京都大学のロースクールの講義は試験対策に特化したものではありませんが、法的思考の本質を学ぶことができる場であり、それが最終的に司法試験の合格への近道になりますし、実務でも生きてきます。また、教授陣の顔ぶれは非常に豪華で、かつ、実務家教員も各分野の一線の方々ばかりです。今改めてシラバスを見てみると、担当教員には著名な方の名前がずらっと並んでおり、非常に贅沢な環境で勉強していたのだなと実感します。実務で仕事をしている者としては、今、実務科目の講義を受けてみたいと思ったりもします。

二点目として、同じ志を持つ仲間の存在ということを挙げることができます。これはロースクール在学中だけでなく、実務に出てからも感じることです。私が仕事をしている大阪にもロースクールの同期が多くいますが、弁護士になって初めのころは、他の事務所であっても、ちょっとした悩み事や仕事で分からないことを気軽に聞ける仲間が近くにいることを非常に心強く感じました。また、私くらいの年数になってくると、同期が様々な専門分野で活躍しており、この分野ならこの人に聞こう、という具合に頼ることもあります。どのような仕事でも人との繋がりは大切ですし、ロースクールで築いた関係は一生ものの財産になると思います。


次に、私の実務の話をさせていただきます。私は、現在、企業法務から一般民事、家事事件など、幅広く業務を行っていますが、その中で、特に私が力を入れて取り組んでいるのがスポーツ法という分野です。スポーツ法という分野には馴染みがない方が多いと思いますが、簡単に言うと、スポーツが関係するあらゆる法分野ということができます。例えばスポーツの競技中に事故に遭うと民法の損害賠償請求の話になりますし、スポーツ選手の肖像を使って商品を作るときは肖像権の取扱が問題になります。そのほか、代表選考に漏れた選手が選考結果に異議申立をしたり、あるいは、不祥事等で活動停止処分を受けた選手がその処分に異議申立をするというようなスポーツに特有の紛争もあり、日本では、このような紛争解決を専門的に扱う日本スポーツ仲裁機構という機関があったりします。このように、スポーツ法には、様々な法律や様々な業務が関係していますが、私がこの分野に関心を持ったのは、単純にスポーツが好きだからです。特にプロ野球が好きなのですが、プロ野球のシーズンオフに、選手が弁護士を代理人につけて球団と年俸交渉をするという話を聞いたことがあり、弁護士になったとき、そのような仕事に関わってみたいと思ったのでした。まだ実際に代理人の仕事はしたことはありませんが、現在、自分の業務の中でスポーツ関係の仕事に関わることもあります。例えば、先ほどご紹介した日本スポーツ仲裁機構の関係では、スポーツ選手の依頼でスポーツ仲裁を申し立てたことがあるほか、スポーツ仲裁で判断を下す仲裁人(簡単に言うと、訴訟手続の裁判官のような役割を果たす者のことです)をつとめたり、海外のスポーツ仲裁を取り扱う機関に調査に行ったりしたこともあります。そのようなこともあって、充実した弁護士生活を送ることができています。


最後に、私が弁護士の仕事について感じていることをお話します。スポーツ法のお話をさせていただきましたが、スポーツ法に限らず、自分の資格を活かして自分が関心を持つ業界や分野に関与することができ、かつ、キャリアも自由に設計できるという点が、弁護士の仕事の醍醐味の1つだと思います。法律は、個人の生活の場面やビジネスの場面など、あらゆる場面に関わるものですから、弁護士は、法律を通じ、自分が関心を持っていることに仕事として関わっていくことができます。そして、弁護士としてのキャリアの描き方も自分次第です。私は弁護士になってから一つの法律事務所で仕事をしていますが、そのような働き方だけでなく、自分の関心のある業界の企業でインハウスとして仕事をしたり、官庁で公務員として新しい分野の規制作りに関与したりして、特定の業界に関する法務のスペシャリストになるというキャリアなども魅力的だと思います。
先に述べたように、京都大学のロースクールには、そのような道に進むための土壌が盤石に整っていると思います。学生の皆さんにはしっかり学んでいただき、将来、自分の好きな仕事に関与したり、ご自身でキャリアを設計したりして、法曹界で大いにご活躍いただければと思います。