法科大学院について
京都大学法科大学院について
法科大学院長 橋本 佳幸
京都大学法科大学院は、2004(平成16)年に、法曹養成制度の中核を担う教育機関として開設され、以来、「法の精神が息づく自由で公正な社会の実現のため、様々な分野で指導的な役割を果たす創造力ある法曹を養成すること」を教育目標に掲げて、歩みを進めてきました。この間、総計3,055名の修了生を送り出し、わが国の法曹養成において大きな実績をあげています。
京都大学法科大学院における教育活動等について、特徴のいくつかをご紹介します。
学生の受け入れ(入学者選抜)に当たり、本法科大学院では、公平性だけでなく開放性・多様性にも留意しています。法学以外の学問分野を専攻した方や社会人経験を積んだ方を受け入れるために、法学未修者枠を設けて入学者選抜を行っており、京都と東京で口述試験を行う特別選抜も導入しています。他方、法学既修者についても、優秀な学生が早期に法曹になることができる途を開くため、法学部3年次生出願枠(3年次飛び入学)を設けているほか、2022(令和4)年度入学者からは、京都大学法学部の法曹基礎プログラム(法曹コース)を修了する学生を対象とする5年一貫型教育選抜を実施しています。
次に、教育内容について、京都大学法科大学院では、司法試験合格の先を見据えて、学生を徹底して鍛え上げ、法曹としての基礎を築きます。この方針のもと、法制度に関する原理的・体系的理解を深め、緻密な論理的思考能力を磨くために、法律基本科目についてクラス制による少人数授業を実施しています。これと組み合わせて、基礎法学・政治学等に関する科目や展開・先端的科目を多数提供することにより、法的問題をその背景にある社会構造や歴史軸の中で捉える広い視野を身に付け、また、最先端の法律問題に取り組む能力を獲得することができるようにしています。さらに、理論と実務の架橋が図られるよう、本法科大学院の授業は、卓越した学識を有する研究者教員とともに、法適用の現場で豊富な経験を積んだ実務家教員が実務科目を担当して法律実務の基礎を指導しています。
また、教育方法の面では、京都大学法科大学院では、討議を重視した少人数教育を行い、京都大学の基本理念である「対話を根幹とする自学自習」を実践しています。クラス制の必修科目を始め多数の科目の授業が、教員と学生との間での双方向のやり取りを通じて進行されます。授業後の教室では、教卓を囲んで学生と教員との間で質疑応答が続き、質問者以外の学生も加わって討論となることも少なくありません。さらに、本法科大学院では、学生が、授業と関係なく、自主的に勉強会を組織して友人との議論を重ねている姿をよく見かけます。このような「自学自習」の姿勢は、「自主・独立の精神と批判的討議」を重んじる京都大学の伝統を体現するものであり、本法科大学院の修了者が法曹界で活躍する原動力ともなっています。
もちろん、京都大学法科大学院では、「自学自習」を重視するばかりではなく、同時に、入学者の多様性を踏まえて、学生のニーズに沿った学習支援も提供しています。とりわけ、法学未修者に対しては、法学既修者のレベルに追い付くことができるように、起案・添削を通じて法文書の作成の在り方を学ぶ科目、前学期に履修した科目を夏休み・春休み等に復習する課外スクール、先輩法曹から学習方法の助言を受ける懇談会など、手厚い学習支援の体制を整えています。
このような教育の成果として、京都大学法科大学院では、2025年春までの修了者3,055名のうち、司法試験合格者は2,480名に達し、累積合格率は81.18%にのぼります。もっとも、本法科大学院としては、これらの数字よりもむしろ、司法試験合格の先を見据えた教育目標のとおりに、数多くの修了生が法実務の様々な場面に進出し、活躍して高い評価を得ていることを、心から誇りとするところです。
また、京都大学法科大学院の修了生からは、法学研究者も多数輩出しています。法学の研究を志望する学生には、本法科大学院から京都大学大学院法学研究科法政理論専攻の博士後期課程に進学する途が開かれており、進学後は手厚い経済的支援を受けることができます。博士学位の取得後は、大学教員の職に就き、次代の法学部生・法科大学院生の教育に従事することとなります。京都大学大学院法学研究科の研究者教員も、現在、教授・准教授あわせて12名が本法科大学院の修了生です。
京都大学法科大学院は、これからも、よりよい教育の提供と優れた法曹の育成のために、不断に努力を重ねて歩みを続けます。今後も、多様な背景をもつ様々な学生が、法の精神が息づく自由で公正な社会の実現に寄与する法曹となるべく、本法科大学院を学びの場として選んでくださることを願っております。また、修了生や関係者の皆様にも、本法科大学院の活動を、厳しくも温かく見守りご支援くださいますよう、お願い申し上げます。