京都大学法科大学院について

法科大学院長 横山 美夏

 京都大学法科大学院は、2004(平成16)年に開設されました。「法の精神が息づく自由で公正な社会の実現のため、様々な分野で指導的な役割を果たす創造力ある法曹を養成する」、という教育目標のもと、現在まで2,766名の修了生を送り出しています。そして、すでに多くの卒業生が、様々な分野で指導的な役割を果たす創造的な法曹として活躍していることを、私どもは誇りに思っています。と同時に、開設から今日に至るまで、本法科大学院に惜しみないご支援をいただき、またご指導くださったみなさまに、あらためて心よりお礼申し上げます。

 京都大学法科大学院は、法曹養成機関として、その開設以来司法試験において高い実績をあげています。2022年春までの修了者数は2,648名、そのうち司法試験合格者数は2,123名、累積合格率は80.17%となっています。

 しかし、京都大学法科大学院の教育が見据えているのは、その先です。
 法曹として、高度に複雑化した現代社会に生起する最先端の法律問題や、社会の抱える構造的な課題に取り組むには、何より、法制度に関する原理的体系的理解を深め、緻密な論理的思考能力を磨くことが大切です。本法科大学院では、そのために、まず、高度な専門的学識とその応用能力の獲得する授業が、また、法学を広い視野から考察できる能力と素養を涵養する、基礎法学および、政治学などの隣接分野の授業が、それぞれ、卓越した学識と教育経験を有する研究者教員によって行われています。と同時に、実務の場で指導的な役割を果たしてきた経験豊富な実務家教員が、研究者教員と連携しつつ理論と実務を架橋する授業を行い、さらに、学生が法曹としての高い倫理的責任感を備えることができるよう指導しています。いずれの授業も、学生との討議を重視することにより、学生が、法曹となるにふさわしい学識および能力ならびに素養を体得できるものとなっています。高度な内容を備えたこれらの授業が、本法科大学院の修了生が、将来、指導的役割を果たす創造的な法曹となるための基礎を支えているのです。

 京都大学法科大学院の特徴として、さらに、京都大学の基本理念であり、伝統でもある、「対話を根幹とする自学自習」が実践されていることを特筆すべきでしょう。授業直後の教室では、教員に質問する学生の周りに、さらに学生が集まって、教員と学生、学生と学生との間で議論が展開し、教員が教室を去った後もその議論が続くことも少なくありません。法科大学院棟では、教室や演習室はもちろん、あちこちで、学生がグループ学習をしている姿が見られます。学生が自主的・積極的に議論を行うのは、まさに「自主・独立の精神と批判的討議」を重んじる京都大学の伝統ゆえといえましょう。この活発な「自学自習」こそが、本法科大学院の修了者が法曹界で活躍している原動力であると自負しています。

 京都大学法科大学院を修了生には、法学の研究者として活躍しているかたも多くおられます。法学の研究者となることを志望する修了生には、京都大学大学院法学研究科法政理論専攻の博士後期課程に進学する途が開かれています。

 京都大学法科大学院は、これからも、その教育目標のもと、不断の努力を重ねつつ前進してまいります。今後も、多様な背景をもつ様々な学生が、法の精神の息づく自由で公正な社会の実現に寄与する法曹となるべく、京都大学法科大学院を学びの場として選んでくださることを願っています。
 引き続き、みなさまの多大なご支援を京都大学法科大学院に賜りますようお願い申し上げます。