過去の入試説明会等での講演内容からの抜粋です。身分・所属等は、とくに断りがない限り、当時のものです。


藤原 智絵

ふじわら ともえ

山口法律会計事務所

2007年入学/ 2009年修了
京都大学法学部 卒

あこがれを
追い求めて

弁護士を目指したのは13歳。映画『評決のとき』(1996年)に出会ったのがきっかけでした。マシュー・マコノヒー扮する新米弁護士が、人種差別の嵐が吹き荒れる中、自分の知識、話術を駆使し、強い信念と深い人間力を携えて活動する姿に衝撃と感動を覚えました。こんなふうに自分をフルに使って、誰かのために力を尽くす仕事があるのだと知り、将来像として追い求めるようになりました。
高校卒業後、一年浪人の上で京都大学法学部へ入学。当時は司法制度改革のまっただ中で、より身近で社会のニーズに応えられる法曹関係者を増やすという構想のもと、新司法試験とロースクール制度が急ピッチで進められていました。あこがれの未来をつかみ取りたい私は、自主自立を重んじる京都大学ロースクールに、迷うことなく進学を決めました。


ロースクールの
日々で得たもの

ロースクールでの日々は、今から振り返っても、背筋がピンと伸びるような緊張感、努力、挫折、克服の連続でした。毎日の授業は双方向であり、一瞬一瞬に学生の積極性が問われます。精一杯予習をしても、それだけでは答えきれない、問題の「その先」を問われる。インプットだけでなくアウトプットも必要であり、日々の予習・復習に膨大な時間を使う中で、徹底して考えぬく頭を鍛えられました。悩み、間違いながらの学習でしたが、プレッシャーの中でも確実に成長できている実感がありました。
さらに、現役の裁判官や検察官、弁護士の先生方が教えに来られており、現実に起こる様々な問題に沿った議論をすることができる。机の上での議論が、その先の未来にどう繋がるのを垣間見ることができました。
司法試験に向けた勉強は孤独であり、自分と向き合い続ける苦しさがあります。時には投げ出したくなることもあるでしょう。しかし、京都大学ロースクールでの教育は、信じて食らいつくことが何よりの鍛錬となる、本当に得がたい場所であると思います。


弁護士に求められる力

司法試験合格後、山口法律会計事務所(当時:山口健一法律事務所)という少人数の事務所に入りました。もともと社会的な問題解決をライフワークとしながら、身近な人たちの力になりたいという強い思いがあり、その活動を正面から応援してくれる場所として選びました。
日々の業務は、離婚や面会交流、相続といった家事事件、患者側・病院側どちらも対応する医療事件、会社や個人が当事者となる民事事件、労働法務から労働審判と裾野の広い労働事件、そして行政事件、刑事弁護や刑事被害者対応など、身近に起きるありとあらゆる法律問題を取り扱っています。またライフワークとして、大阪アスベスト弁護団に弁護士1年目から入り、泉南アスベスト国家賠償請求訴訟の最高裁判決や、建設アスベスト大阪訴訟での最高裁判決といった、節目となる司法判断に携わってきました。一人一人の力は小さくとも、地道に少しずつ理不尽な状況を改善し、大きなうねりを作る、そんな活動に誇りをもっています。
弁護士という仕事は、法律のプロとしてのサービス提供はもちろんのこと、生身の自分で依頼者と向き合い、自らの心をもって共に悩み、頭を使って共に考え、人生の一瞬を伴走することであると考えています。そして、依頼者が紛争を乗り越えてなお、その良心が生き続けられるような地点を、解決として目指すべきではないかと考えています。
そのプロセスにおいては、事実を調査し、立証し、法的な主張に構成するだけでなく、裁判官や検察官、相手方代理人、そして依頼者をも説得する作業が必要です。そのためには、思考力、分析力だけでなく、見えない事実を引き出してスポットを当てる自由な想像力、そして共感し表現する力が問われます。
ロースクールでの鍛錬は、これらの力の土台を作るものとなります。
努力が結果となって報われる学生最後の機会。ぜひ、己と講師陣を信じ、出来る限りのジャンプをして、未来をつかみ取ってもらいたいと思います。